甲府地方裁判所 昭和58年(わ)332号 判決 1983年11月14日
裁判所書記官
五味忠彦
本店所在地
山梨県東八代郡石和町河内一二〇番地
株式会社信栄
(右代表者代表取締役宮入忠明)
本店所在地
静岡県三島市徳倉五丁目九番五〇号
株式会社宮入製作所
(右代表者代表取締役宮入忠明)
本籍
長野県諏訪郡富士見町落合五、九七四番地内口
住居
山梨県甲府市相生一丁目一六番一七号
会社役員
宮入忠明
昭和二年九月一九日生
本籍
山梨県甲府市国母四丁目一、六四一番地の六
住所
同市国母四丁目三番四〇号
会社役員
長塚修
昭和一七年一月一三日生
右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官牧義行出席の上審理して、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社信栄を罰金二、五〇〇万円に、被告人株式会社宮入製作所を罰金二〇〇万円に、被告人宮入忠明を懲役一年六月に、被告人長塚修を懲役一年にそれぞれ処する。
この裁判確定の日から、被告人宮入忠明に対し四年間、被告人長塚修に対し三年間、それぞれその刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社信栄(以下「信栄」という。)は山梨県東八代郡石和町河内一二〇番地に本店を置く資本金二、四〇〇万円(昭和五五年九月一〇日以前の資本金は一、二〇〇万円、同年三月三日以前の資本金は三〇〇万円)の、被告人株式会社宮入製作所(以下「宮入製作所」という。)は静岡県三島市徳倉五丁目九番五〇号に本店を置く資本金三、〇〇〇万円の、いずれも高圧ガスバルブの製造販売等を目的とする株式会社であり、右両社は、信栄が高圧ガスバルブの原材料である黄銅棒を下請業者等に半製品化させて宮入製作所に納入し、同社がこれを製品化するという関係にあり、被告人宮入忠明(以下「被告人宮入」という。)は右両社の代表取締役、同長塚修(以下「被告人長塚」という。)は右両社の取締役業務部長として、ともに右両社の業務全般を統括していたものであるが、被告人宮入、同長塚は、不況時等に備え、簿外資産を蓄積するため法人税を免れようと企て、共謀の上、
第一 信栄の業務に関し、株式会社山崎商店に対する黄銅屑の売上除外、たな卸除外等の方法により所得を秘匿した上、
一 昭和五四年六月一日から昭和五五年五月三一日までの事業年度における信栄の実際所得金額が一億八、三三〇万五、七一九円あったにもかかわらず、同年七月二九日、山梨県山梨市上神内川七三八番地所在の所轄山梨税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四、七八八万四、八三一円で、これに対する法人税額が一、七六九万一、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額七、一八四万八、四〇〇円と右申告税額との差額五、四一五万七、二〇〇円を免れ、
二 昭和五五年六月一日から昭和五六年五月三一日までの事業年度における信栄の実際所得金額が一億三四万八、〇五六円あったにもかかわらず、同年七月三一日、前記山梨税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四、九六九万三、一六六円でこれに対する法人税額が一、八八二万五、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額四、〇〇八万九〇〇円と右申告税額との差額二、一二五万五、六〇〇円を免れ、
第二 宮入製作所の業務に関し、信栄に対する黄銅屑の売上除外、たな卸除外等の方法により所得を秘匿した上、昭和五四年一〇月一日から昭和五五年九月三〇日までの事業年度における宮入製作所の実際所得金額が三、八七二万九、二〇四円あったにもかかわらず、同年一二月一日、静岡県三島市文教町一丁目四番三三号所在の所轄三島税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二、一六二万一、一七八円でこれに対する法人税額が四一四万九、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一、〇九七万五、八〇〇円と右申告税額との差額六八二万六、〇〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 被告人宮入及び同長塚の当公判廷におけを各供述調書
一 被告人宮入の検察官に対する昭和五八年七月一五日付け(別紙を除き丁数が一三丁と四丁のもの)各供述調書
一 被告人長塚の検察官に対する同月一一、一三日付け、同月一三日付け及び同月一四、一六日付け各供述調書
一 宮入岩子及び望月勝子の検察官に対する各供述調書
判示冒頭及び第一の事実について
一 被告人宮入の検察官に対する同月一五日付け(一六丁のもの)供述調書
判示冒頭及び第二の事実について
一 被告人宮入の検察官に対する同月一五日付け(五丁のもの)供述調書
判示冒頭の事実について
一 被告人宮入の検察官に対する同月一二日付け並びに被告人長塚の検察官に対する同月八日付け及び同月八、一一日付け各供述調書
一 登記官作成の信栄についての登記簿謄本、閉鎖登記簿謄本及び宮入製作所についての登記簿謄本
判示第一及び第二の事実について
一 被告人宮入ほか一名作成の同年四月一九日付け上申書及び同年一〇月一三日付け申述書
一 小川克亮の検察官に対する同年六月一日付け供述調書
一 大蔵事務官作成の同年二月四日付け売上高調査書、黄銅屑の売上除外及びたな卸除外調査書、仕入高調査書、切粉回収時の油水分含有量調査書、切粉売却時の油水分含有量調査書、黄銅屑の相場、最終売値、最終仕入値及び申告額調査書、昭和五六・一一・二六着手日に確認した黄銅屑調査書、昭和五七年九月一六日付け及び同月一五日付け各検査てん末書並びに株式会社宮入製作所で発生した切粉等の調査書
判示第一の事実について((一)は判示第一の一の事実、(二)は判示第一の二の事実を示す。( )のないものは判示第一の事実全部についてである。)
一 被告人宮入の検察官に対する昭和五八年七月一五日付け(六丁のもの)供述調書
一 被告人宮入他一名作成の昭和五七年五月一二日付け、同年四月一九日付け(三通)、同年三月二六日付け及び同年七月五日付け各申述書並びに同年五月一二日付け上申書
一 小川克亮(昭和五八年六月三〇日付けのもの二通)、勝又功(二通)、長塚正男、小沢雄(二通)、山本良次、吉澤修吾、吉澤ちか子、岩松茂樹、西山節子、小林實、清水清治、山崎新一(二通)、金鍾三及び高山荘太郎の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の(株)信栄における黄銅屑発生量調査書、期末商品たな卸高調査書、外註加工費調査書(一)、減価償却費調査書、修繕費調査書、受取利息調査書、償還益調査書、雑収入調査書(一)、支払利息・割引料調査書(一)、固定資産売却益調査書(二)、固定資産除却損調査書(二)、昭和五七年一二月一八日付け価格変動準備金損金不算入額等調査書、貸倒引当金繰入額調査書(一)、昭和五八年二月二二日付け事業税認定損調査書及び同年三月一四日付け証明書
一 検察事務官作成の電話聴取書(一)
一 押収してある法人税確定申告書二通(昭和五八年押第五七号の2、4)
判示第二の事実について
一 被告人長塚の検察官に対する昭和五八年七月一六日付け(九丁のもの)供述調書
一 菊地武、高須時義、成田眸、長塚和男及び斉藤勲の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の昭和五七年九月一六日付け及び昭和五八年三月二二日付け各証明書、同年二月五日付け売上高調査書、期末商品製品たな卸高調査書、債券償還益調査書、同月二一日付け価格変動準備金損金不算入額等調査書、特別減価償却費調査書並びに同月二一日付け事業税認定損調査書
一 検察事務官作成の電話聴取書(二)
(法令の適用)
信栄の判示第一の一の所為は昭和五六年法律第五四号「脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律」附則第五条により同法による改正前の法人税法(以下「改正前の法人税法」という。)一六四条一項、一五九条一項に、判示第一の二の所為は法人税法一六四条一項、一五九条一項にそれぞれ該当するところ、情状に鑑み同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算した金額の範囲内で信栄を罰金二、五〇〇万円に処することとする。
宮入製作所の判示第二の所為は改正前の法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するので、その所定金額の範囲内で同被告会社を罰金二〇〇万円に処することとする。
被告人宮入、同長塚の判示第一の一及び第二の各所為はいずれも刑法六〇条、改正前の法人税法一五九条一項に、判示第一の二の所為は法人税法一五九条一項にそれぞれ該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上はいずれも刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人宮入を懲役一年六月に、同長塚を懲役一年にそれぞれ処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から、被告人宮入に対し四年間、同長塚に対し三年間、それぞれその刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 大野市太郎)